一人暮らしのとしえ(仮名)さん(86歳)は、今は買物も家事もきちんとできていてお金の管理もできています。でも、配偶者もお子さんもいなく、きょうだいは高齢で遠方に住み、近くに頼りになる身内はいません。
先日、転倒して頭にケガをしてしまい、救急車で運ばれました。すぐに退院しましたが、ケアマネジャーが駆け付ける道すがら‥‥
しばらくして、ご本人と「もしも?」のときのどうするかを話しますが、
「そうね、困るわね。」「暗いことは考えたくないの」と、としえさん。
成年後見センターでもらったパンフレットを見ながらケアマネジャーが折に触れ、制度について説明しますが、
「そうねぇ、一度聞いてみたいけど…」
というものの、セミナーや相談をお勧めしても、なかなか実行できませんでした。
それから一年後・・・
ケアマネージャーより、ようやくとしえさんが「話を聞いてみようかな」と言ってくれたとのこと。「制度について説明してほしい」とケアマネージャーから相談のご依頼をいただきました。
ところで・・・、
こういう場合の制度は、「成年後見(法定)ですか?」
それとも「任意後見?」
「日常生活自立支援事業」は説明したけれど、としえさんから断られました・・・。
※制度や事業名をクリックすると
説明が表示されます※
認知症、知的障害、精神障害、発達障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方(ここでは「ご本人」といいます。)について、ご本人の権利を守る援助者(「成年後見人」等)を選ぶことで、ご本人を法律的に支援する制度です。
ご本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した場合には、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
認知症の症状や物忘れ、知的障害や精神障害などにより判断能力が十分でない方が、地域で安心して生活をおくることができるよう支援する制度(社会福祉法)です。
本人との「契約」により、福祉サービスの利用援助を中心に、必要に応じて日常的金銭管理サービスを担当の生活支援員・専門員が援助します。
裁判所ウェブサイト(後見ポータルサイト)
まって、まって…!!
制度をご本人に当てはめるのではなく、
としえさんが「何に困っていて」、「どんな支援が必要なのか」を
としえさんといっしょに考えていきましょう。
ケアマネジャーさんといっしょにとしえさんのご自宅に伺いました。
としえさんの今の困りごとや不安、これまでとしえさんがどのように困りごとや不安を解決してきたか、工夫したこと、大変だったことをお聴きしました。
そして、今後に向けて成年後見制度などの権利擁護の制度や資源についてお話をしました。
何度かの面談のあと、としえさんからの答えがはっきりと聞かれました。
としえさんは、
ケアマネジャーとしては心配だけど、としえさんの意思は固く、としえさんの気持ちを尊重したい。たしかにまだまだ身の回りの生活やお金のことはできています。
今回面談していくなかで、としえさんの固い意思、としえさんの人間関係、経済状況など多くのことが掴めました。困ったときの対応方法と相談の順序、タイミングや相談先が整理できました。
としえさんの場合に、制度を使ったときに解決できること、できないこと、手続きや費用などの具体的なイメージも少しわかりました。そして、ちょっと覚悟もできました。
今後もとしえさんや関係者とも相談しながら支援していきます。
その時はまた相談させてください。
高齢で身近にたよれる身寄りのない方の暮らしを支えていくことは、ご本人も支援者も不安になることも多くあります。
介護のこと、医療のこと、お金のこと・・・キリがありません。
ですが、制度をご本人に当てはめるのではなく、ご本人のできていること、思いや価値観、歴史を大切に見直すと、その時その場面、その状況にあった支援方法はひとつではありません。
できるかぎりご本人を尊重し、正しい情報や状況把握のもとに支援者がチームでご本人を支えていきたいものです。
そんなご本人や支援者のご相談を受けて、私たちぷしゅけⅡは、お手伝いしていきます。